資源をつくる－リサイクルから資源栽培へ－

摘要

鉱物資源は，減耗不補充とされる素材原料である．大地の中から採掘され，鉱物が採取され，製錬されあるいは化学的に変換されるなどのプロセスを経て，金属や化合物として産業への素材に供給されている．工業化，近代化を担う構造材，家電，自動車，情報機器などの製品への金属の使用量は，20世紀に入り指数関数的な増加を示している．大量生産·大量消費は，地球規模での経済システムとして確立され，過去30年間を見ても金属の利用は非常に大きく発展してきている．それにともない鉱物資源の開発は大規模鉱床がターゲットとなり，製錬所も大量生産体制が構築されてきている．大量供給による金属資源の枯渇問題は，供給障害に至ってはいないものの幾度となくその危機感が顕在化されてきている．一方，大量消費社会での大量廃棄は，金属を含む廃棄物が環境汚染を引き起こす要因となり，また素材を生産していく鉱山や製錬所，そして素材から各種部品および製品を製造する各プロセスの工場では，大量の廃棄物が生じ，汚染への厳重な環境保全が不可欠となっている．「持続的可能な発展」が現在，社会のコンセサスとなっており，そのための環境保全は生産のための絶対条件である．現在の大量生産·消費そして大量廃棄のシステムでは，環境への負荷が増大する一方である．この現在のシステムから脱却するため，廃棄物の発生抑制，減量化，リサイクルを促進させ，循環型経済·社会システムの構築が重要課題となってきている．新たな物質循環における産業技術体系の確立のため，資源の採掘から製品の廃棄に至るシステム全体の環境負荷の最小化である．21世紀のこの課題に対し，鉱物資源の利用を最小限にとどめ，各プロセスでの廃棄物からの金属の回収および消費し，廃棄された製品からの金属の抽出でリサイクルの領域を拡大させ，さらに"資源をつくる"という視点に立った技術·システム開発を図っていく必要がある．