超音波含浸法を用いた炭素繊維バンドルへの溶融アルミニウム合金の含浸機構

摘要

溶融アルミニウム合金の炭素繊維バンドル内への含浸性を，濡れ性，音響キャビテーションおよび含浸開始圧の観点から検討した。 音響キャビテーションの発生を蒸気圧および表面張力の点からも検討した。 さらに，音響キャビテーション発生時の繊維バンドルの挙動からも含浸現象を検討した。 （1）Mg濃度にかかわらず，溶融アルミニウム合金とグラファイトとの濡れ性は悪かった。 しかしながら，溶融アルミニウム合金にマグネシウムを2．4mass％以上添加するとはぼ完全に繊維バンドルに含浸した。 また，溶融アルミニウムにマグネシウムを添加すると音響キャビテーションの音圧が上昇した。 以上のことから，含浸性は音響キャビテーションの発生の影響を受けることが明らかとなった。 （2）アルミニウムに蒸気圧の比較的高いZnを4．4mass％添加しても，ほとhど含浸しないが，合金の表面張力を低減するビスマスを0．5mass％添加するとほぼ完全に含浸した。 このことから，含浸性は添加元素の蒸気圧よりも表面張力に大きく影響されることがわかった。 溶融アルミニウム合金の表面張力の低減が，音響キャビテーションの発生を促し，結果として溶融アルミニウム合金の含浸性の向上に有効であることがわかった。（3）炭素繊維バンドルが音響キャビテーション発生領域を通過する際，発生した音響キャビテーションの崩壊によって，著しく繊維間隔が広がることがわかった。（4）超音波振動によって生じる音響キャビテーションの発生·崩壊は，繊維バンドルの開口運動による含浸開始圧の低減作用，およびキャビテーション崩壊による局所的圧力向上作用を引き起こす。 これらの二つの作用によって溶融アルミニウム合金が，繊維バンドルヘ含浸すると考えられた。