色の見えとそのモデル化

摘要

色を数値化することは、色情報を伝える手段として不可欠なことである。国際照明委員会（CIE）は1931年に色の数値化の国際標準を定め、これはCIE1931XYZ表色系として、あらゆる色彩産業界で広く用いられている。色の物差しとして使われていると言っても過言でない。 その後、より人間の色知覚に近い表色系の開発が進められ、1976年にはCIELAB，CIELUVの2つの均等色空間が制定され、これらも色差の評価として広く用いられている。しかし、均等色空間でも解決できない色に関する種々の問題が残っている。 例えば、相関色温度が異なる照明光源の演色性をどのように評価するのか？白色光源の元で計算された色差と昼光光源で計算された色差を比較することに意味があるのか？ テレビに映った画像と、写真に撮った画像の色の見えを合わせるのにはどうしたらよいのか？ 特に異なる画像メディアの間でのカラーマッチングは画像産業界で大きな課題である。 これらの問題を解決する一つの方法として、視環境に依存しない色の見えの定量化の研究が多くの研究者により1990年代から本格的に始まった。 1997年にはCIE色の見えモデルの簡素版CIECAM97sが発表され、これが修正、改良を重ね、いよいよCIECAMO2が世に出ることになる。 本稿では、従来の表色系と色の見えモデルの関係、CIECAMO2に至るまでの過程、CIECAM97sからCIECAMO2への修正点について解説する。