TiN分散窒化ケイ素セラミックスの開発と応用

摘要

Si_3N_4はすぐれた熱的·機械的性質を有する代表的なエンジニアリングセラミックスとして開発され広く利用されている。この物質は難焼結性物質であるが，Si_3N_4－Y_2O_3－Al_2O_3系を出発組成とすることで撤密な焼結体が作製され，これが今日のSi_3N_4系材料の基本となっている1）2）。この焼結体の微構造ほ図1のようなβ－サイアロン（サイアロンについては後述）柱状結晶粒とY-Si－Al-O－N系ガラス粒界相からなり，高強度·高靭性を特徴としているので，過酷な熟的·機械的環境下においても使用が可能になった。具体的には，1981年からディーゼル用のグロープラグを皮切りに，ホットチャンバ，ターボロータ等に実用化され3），ベアリング，各種耐摩耗部材，アルミ溶湯部材，発熱体，切削工具へと用途は多様化して今日に至っている。そのなかで，特に注目されるのが，東芝一光洋精工の共同研究によって開発され，1984年に世界で初めて実用化されたSi_3N_4ベアリングである4）。その詳細は次項以降で紹介する。最近では，Si_3N_4の機能性を生かした半導体素子用絶縁基板，蛍光体などの新しい機能物質が生まれるなど応用分野は拡大している。