熱測定を基盤とした有機分子集合体のナノ構造解析とその制御

摘要

物質がナノスケールになると，通常のサイズとは異なる性質が発現する。全体の体積に対する大きなエネルギーをもつ表面の割合が大きくなる「表面効果」と，集合体としての性質よりも原子や分子の性質が顕著になる「量子力学効果」が主な原因である。界面活性剤やブロック共重合体のように，相反する性質をもつ成分で構成された分子は，相分離によって特徴的なナノスケールの規則構造を自己組織的に形成する。このような規則構造は，系のギプスエネルギーを低くするという熱力学的な要請で形成される。規則構造の内部に液晶や結晶などの階層的な構造をもつ有機分子集合体では，各相間の転移を熟測定によって解析することで分子集合体の熱力学的状態を知ることが可能である。熱力学的に振る舞う分子集合体であっても，規則構造が多結晶的であっては応用する観点からは不都合である。自己組織的に構造形成する分子集合体は外部刺激を利用すると構造を制御することが可能で，液晶が良い例である。ナノスケールの規則構造は2つ以上の異なる相で形成され，相の間には大きなエネルギーをもつ界面が存在する。界面を含めたナノスケールの規則構造を制御することは可能であろうか。