2，2－ジアミノエノールを視る！N－ヘテロ環状カルベンによるアルデヒドの極性転換

摘要

1958年，Breslowらは，チアミンによって触媒されるベンゾイン縮合に対して革新的な反応機構を提起した。すなわち，反応の活性種としてN－ヘテロ環状カルベン（NHC）が発生し，それに続くアルデヒドの極性転換が含まれるとBreslowは提案した（図1）。当時，NHCの単離や反応性に関する報告は全くなかったにもかかわらず，Breslowの提案は有機合成化学者達に広く受け入れられ，当該分野の根幹をなす礎の1つとなった。しかし，Breslowの報告から50年以上が経過した今日においても，鍵中間体1（Breslow中間体）の観測·単離はいまだに挑戦的な課題として残る。中間体，または類似の構造的特徴を有する化合物の構造や反応性を明らかにすることは，既存の反応を改良するため，または新規反応を開発するための重要な足掛かりとなり得る。本稿では，Breslow中間体（または，その類縁体）の単離，および反応性の解明を目的とする最新の研究結果を紹介する。