紙パ技協誌の新たな発展に期待して 第2回：紙パ技協誌にジャーナリズム機能は存在するのか

摘要

本シリ一ズの第1回では紙パ技協誌の現在の性格を形作ってきた1944年の紙パルプ技術協会の創設から現在までの76年余りの歴史的発展過程と現状の分析を試み，組織や機関誌としての特異性を浮かび上がらせた。紙パ技協誌が現状を脱構築して新たな展開を目指そうとする場合，機関誌の母体である紙パルプ技術協会という組織に由来する限界または動かし難い制約条件というものは当然存在する。しかし，現状では誌面に浮上していないがステークホルダーである製紙業界の人達も大学などの研究機関の研究者達も，誌面の情報を相対化して客観性と信頼性を向上させるためには，自身が閨わる産業および研究分 野に対する外部および内部からの批判的見解も含めた健全なジャーナリズム機能の発現を紙パ技協誌に求めているのではないかと筆者は捉えている。また筆者に今回の執筆の企画がもたらされたこと自体が編集委員会の中に閉鎖的で官僚的な感じが幾分か漂う現在の紙パ技協誌を斬新で，オープンで，ダイナミックな雰囲気の漂う魅力的な雑誌に変革していこうという意欲の萌芽があることの証左であり，改革のエネルギーが編集委員の方々の意識の潜在下にあることが伺われ，将来に向けた明るい希望の兆しと捉えたい。