夕暮れ

摘要

その田園は黄金色から地肌丸出しに戻っていた。夕日を背にした山裾一帯は，静けさが漂い，人の気配より夕もやが似合う。山の端にかかる夕日が晩秋の装いを地肌に投げかけていた。 沈黙の山里は，碁盤をじっと抱え込hでいるような風情である。 自然がしつらえた盆地の一角に大小二つの人影が現れた。 東と西にのびた畦道を夕日に向かって歩いている。 東に山が連なり，西の山裾は懐が深い。畦道を分断する農道がゆるやかな起伏を描いて南北に横たわっていた。