微粒子生成の「場」としての水·エタノール溶液と超音波振動による溶液構造制御の試み: 超音波振動で酒を旨くするとともに微粒子を巧く作るにとができるか

摘要

本誌·本特集の読者であれば、超音波キャビテーションが物質の化学的変化を誘起しうることは前提としてよいだろう。本稿では特に「化学」と「物理」を明確に分けたい。すなわち、超音波照射による化学反応促進やラジカル生成など、物質が変化するケースを「化学」、超音波照射しても物質は変化しないケースを「物理」とする。前述のウィスキーの話で市販の超音波洗浄機が使用されたのであれば、キャビテーションが生じていることは明白で、多少なりとも化学変化が起きているものと思われる。物質が変われば「味」が変わるのは当然であるが、僅かな生成物質を追跡して「味」を定量的に評価するのはいかにも困難であり、官能試験の名を借りた「超音波処理ウィスキー試飲会」は酔っ払いの戯言へと紛れてしまうのかもしれない。