生体組織音響特性の高精度計測－超音波による定量診断手法の開発

摘要

生体組織の平均的、概略的な音響特性は求められているが、病変との対応関係や生体組織特有の不均一な音響構造の把握は不十分である。 生体組織はさまざまなスケールでの構造をもっているうえ、病変の発生と進展は3次元的な構造に依存して生じ、種々の不均一構造をもっているので、音波と生体組織の相互作用は均一媒質との関係に比べ格段に複雑である。 さらに、人の組織試料では、測定に種々の制約が発生し、試料に対する自由度は少なく、系統的な検討が困難である。 また、生体組織において「正常」あるいは「軽度」、「重度」などの病変の程度は、通常 ⒁綆煠蝹趣榫t合的に評価されるので、組織の物理的、化学的変化の程度と音響特性の対応は直接的でないことが多い。このため、定量的な議論に耐えられる病変生体組織の討測データは多くないのが現状である。 本稿では、我々が開発してきた高精度な計測法と、それによる音響計測データと病理的知見との比較検討などによって、超音波による定量診断の基礎となる音響特性と生体組織との対応関係について紹介する。