舶用レーダー向けマグネトロンの技術動向

摘要

マグネトロンは，高出力のマイクロ波を高効率で発振する事ができる電子管デバイスである。 長い間世に受け入れられたデバイスであるが，固体化されるには，まだ時間が必要との予測がされている。 そのような状況下で，マグネトロンはレーダーの性能向上を目的とする要求から，進化が遂げられている。 第1段階としては，十数年前に長寿命化要求が強まり，ESAC (Expanded Surface Aria Cathode)シリーズが開発された。 マグネトロンのアノード分割数を増やし，それによりカソード表面積を増加させ消耗品であるカソードオキサイド量を大幅に増加した設計となっている。 現在では，2kW，4kW出力のマグネトロンは，殆どレーダー本体の寿命まで交換も無く使用されている。 第2段階としては，レーダーの探知分解能を向上させるためにショートパルス対応の要求が高まった。発振パルス幅50～60nsでのレスポンスが求められ，カソードの立ち上がり特性変更により要求性能を確保できるようにした。 第3段階としては，スプリアスエミッションの抑制に関する要求が求められ現在に至っている。 2003年よりレーダーアンテナからのスプリアスエミッション規制が，欧州を中心として強化されている。 さらに，ITU (International Telecommunication Union)から2007年を予定として規制が強化されるプログラム案が示されている。 このスプリアス規制の強化レベルは未決定であるが，最も厳しく規制された場合にも，マグネトロンおよび，伝送系デバイスを供給できるように開発を進めている。 これから，上述した3段階で行われた改良を中心に，近年の舶用レーダー用マグネトロンの技術動向としての紹介を行う。 特に，今後の動向が懸念されるスプリアスエミッションの抑制にページを使いたいと考える。