原油市況はなぜ20数ドルの急落となったか

摘要

米国石油協会（API）がこのほど発表した「2008年上半期石油需給概況」によると，同期の石油需要は前年比3.0％減にもなった。 2007年に2,070万バーレル／日だった需要が62万バーレル／日も減少したのである。 サウジアラビアは6月から50万バーレル／日，7月から更に20万バーレル／日の都合70万バーレル／日の増産を約束したが，その増産幅とほば同規模の需要減退が，サウジに「原油が高騰しているのは精製能力不足や投機資金のためではない。 原油需給が逼迫しているためだ」として最も強力に増産を要求してきた米国で起こっているのである。 記者は再三指摘してきたが，原油需給は決してタイトではないばかりか余っているのである。 サウジが増産したからといってそれを誰が買うのか，という問題は依然として付きまとっていたのだが，余剰原油を更に増やすことになったのが米国の需要減退である。 米国の需要減退がなぜ進行しているのか。 その原因は誰の目にも明らかである。 4ドルを大きく超えたガソリン小売価格が車離れを引き起こしているのである。 インド·中国など新興国の石油需要の急増に原油価格高騰要因を押しつけて憚らなかった米国が，その需要減退でこの2週間の20数ドルの原油急落につながっているのである。急落要因はそれだけではないが，後述するように，今日の反落要因のほとhどが米国発である。 急騰要因の裏返しなのである。 今回はそのうちの需給要因に焦点を当てて解説したい。