石油·天然ガスの戦略性を再認識セキュリティ向上に国の役割を強調

摘要

資源エネルギー庁は5月18日，総合資源エネルギー調査会石油分科会石油政策小委員会（委員長·橘川武郎東京大学社会科学研究所教授）の第6国会合を開催し，今後の石油政策の方向性をとりまとめた報告書案を提示した。5月29日の石油分科会に報告し，パブリックコメントの募集を経て，6月末に最終報告をまとめる。原油価格のかつてない高騰に直面し，その背景である余剰生産能力の低下や中国，インドなどのエネルギー需要の急増，中東情勢の混乱，米国の精製能力不足と投機資金の流入といった事態に対し，今後，予想される資源獲得競争の激化や地球温暖化問題への対応も踏まえ，国の積極関与によるセキュリティ向上を提言した内容。 資源工ネルギー庁では，同時に，エネルギー基本計画の見直し作業や，2030年を睨hだ数値目標「新·国家エネルギー戦略」の策定も進めており，石油政策小委のとりまとめは最終的にはエネルギー基本計画に集約されることになる。 焦点の開発政策では，新·国家エネルギー戦略で示された2030年における自主開発比率の40％達成目標が，自民党エネルギー戦略合同部会の中間報告にも採択されたほか，日本経団連も石油政策小委と同一歩調で，「JOGMECの出資·債務保証制度の改正によるリスクマネー供給機能の強化」を提言するなど，政·官·財が一致して国策的に石油·天然ガスの権益確保（安定供給確保）を進める環境が整ってきた。 石油政策小委の報告書案は，この開発政策とともに，精製·流通の供給基盤強化，燃料多様化によるリスク分散，緊急時対応の備蓄機能の整備―などの多様なセキュリティ向上策を網羅的にまとめたもので，「10～20年先を見据えた政策的対応の再構築」という位置付け。 やや総花的印象は拭えないものの，21世紀前半のわが国化石燃料政策の方向性を明確にした点で注目されよう。