化学産業と触媒開発の変遷と今後の展望に関する考察

摘要

日本における石油化学産業は，1950年代にクラッカー技術が導入され，ナフサクラッカーにより得られる低級オレフィン類（エチレン，プロピレン等）及び芳香族類（BTX）を原料として，各種の化成品モノマー，ポリオレフイン，ポリエステル，ナイロン等のポリマーへいかに効率的にするかという触妹プロセス技術の開発に歩調を合わせて発展してきた．化学品の製造の大半は，国内では石油化学コンビナートで実施されている．日本ではコンビナートと言われることが多いが，英語では‘‘Complex’’と表現されることが通例である．この言葉から連想されるとおりに，多種多様の原料から多種多様の化学品を製造する触妹技術が1970年代後半からほぼ20世紀が終わる時期まで大いに発展した．その大半を担ったのは日本の化学産業であった．このひとつの理由は，多くの化学企業が国内に存在し，激しい技術開発競争があったことがあげられる．経済が右肩あがりで先hじて作れば売れる時代であったからである．1990年に発表された御園生等による世界の新触媒技術のReviewにおいては，特に化成品の製造触媒において日本の独壇場であったことが読み取れる1）．導入した海外のベース触媒からは想像できないほど構成が変化しかつ大きな性能向上がもたらされた例，あるいは全く日本独自の技術として工業化された事例は枚挙にいとまない．