環境汚染物質の健康影響に関する疫学調査

摘要

一方，欧州を中心として，騒音による心血管系疾患への影響を示唆した研究結果が報告されてから，呼吸器系だけではなく循環器系に対する影響や，大気汚染物質だけではなく道路交通騒音による複合影響を指摘する報告もある．また，東京都は2003年から4年間，「騒音に対する住民意識調査」を実施しており，30％の住民やうるさいと感じるのは，航空機（基地）騒音では50dB（LAeq）未満，鉄道（新幹線）騒音では45dB程度，鉄道（在来線）騒音では50dB程度，道路交通騒音および航空機（空港）騒音では55dB程度であることをまとめた．航空機騒音や鉄道騒音のような間欠騒音と異なり，道路交通騒音は変動騒音であることから，比較的多くの住民に慣れを生じさせている可能性があるため，潜在的なストレスに対する社会的調査意義は大きいと考えられる．以上のように，ヒトを対象とした疫学研究は，最近告示された微小粒子状物質（PM_(2.5)）の環境基準（2009年9月9日告示）の策定や社会に対する説明責任のため重要視されてきていることから，ここでは疫学研究の概要を述べることとする．