高速衛星回線におけるスループット保証を目指したTCP制御方式

摘要

超高速インターネット衛星WINDSなどにより衛星回線は有線回線と同様に高速化されつつある．衛星回線では，スーパーハイビジョン動画の伝送実験が行われており，マルチメディアアプリケーションの利用が増大していくと考えられる．この様なアプリケーションでは，一定のスループットを保証する必要がある．そこで，TCP輻輳制御を用いてエンドツーエンドでスループットの保証を目指す技術（QoS-TCP）が提案されている．従来のQoS-TCPは，アプリケーションの要求に応じて送信レートを調整することで，所望のスループットを達成してきた．しかし，パケットの再送制御については十分考慮されていない．衛星回線の様な広帯域，高遅延，かつパケットロスの発生する環境でこれらの技術を用いた場合，再送時のスループットが不安定となり目標とする帯域を達成できない場合がある．そこで本稿では，パケットロス発生時の輻輳ウインドウの低下を抑制し，データ送出を促進する再送制御を導入したTCP制御方式を提案する．提案方式では，従来方式の再送時に発生するパケット送出の遅延を低減することにより，QoS-TCP の帯域確保能力の向上を目指す．シミュレーション実験により比較評価した結果，衛星回線上で発生する一般的なBER の環境やTCPフローが複数混在する環境において提案方式は従来方式よりも高いスループットの確保を実現できることが分かった．