電解研磨による細管内面の平滑化と表面改質

摘要

近年，ステンレス鋼の電解研磨に対するニーズは多岐にわたり，その目的は多様化している．たとえば，半導体やディスプレイ等の産業においては表面清浄化，放出ガスの抑制，パーティクル発生低減などが求められ，また医薬品，高純度化学薬品および高純度ガス等の製造関連装置では，平滑化とともに，表面清浄化，耐孔食性の高い表面の創生を要求されている．そして，そのような装置に関連する配管でも，それらの要求が厳しくなり，さらに多種多様な配管，内径が数mm以下の微細管の需要も増している．現状では，ステンレス鋼の細管は機械的研磨で平滑にし，その後硝酸等の酸化剤による不動態化処理がなされているのが一般的であるが，機械研磨による非金属介在物や研磨傷，残留応力の存在による経時的な悪影響が懸念されている．ここでは，細管の電解研磨の手法およびその適用例と，他の機械的研磨では得られにくい耐孔食性と表面清浄性の向上を中心にして「電解研磨＋不動態化処理」について述べる．