福島原発事故に対する日本放射線影響学会の取組み

摘要

1954年3月1日，ビキニ環礁での米国による水爆実験に巻き込まれた漁船第五福竜丸の乗組員23名がフォールアウトによる被ばくを受け，急性放射線症を発症する事態となった。事故後，基礎班，医学斑，生物班，水産斑，地球物理班からなる放射線影響調査特別委員会が設置され，放射線の環境および人体に対する総合的な影響研究が開始された。放射線影響研究の進展にともない，幅広い専門分野の研究者の分野横断的な相互理解の必要性が認識され，“放射線が人体と環境に与える影響およびこれに関する諸科学の進歩に寄与し，研究者間の連絡と協力を計ることを目的”として日本放射線影響学会が1959年7月2日設立された。以後，本学会は基礎研究を中心に会員の情報交換の場を提供し，研究の推進をはかるとともに，チェルノブイリ原子力発電事故，JCOウラン加工施設における臨界事故，東京電力福島第一原子力発電所事故，あるいは放射線診断での医療被ばくによる健康問題（Lancet論文問題）等に対処する等，社会への貢献を果たしてきている。現在の会員数は約900人で，その多くは，アカデミックおよび企業の基礎研究者及び学生である。近年は，医学·生物系の研究者の割合が増加している。