食品の安全·品質に関する技術講座 第53回 食品製造装置の洗浄①汚れの付着機構

摘要

食品製造装置に付着残存した汚れは，食中毒菌などの微生物にとっての格好の生育の場となることから，食中毒汚染のリスクを軽減し，製品の安全性を確保するためには，洗浄は必要不可欠な操作である．近年の食品製造規模の拡大，食品流通の広域化，グローバル化に伴い，発生する食中毒も規模が拡大する傾向があり，食中毒防止の鍵となる装置の洗浄の重要性は増し，求められる洗浄レベルは上昇している．また，洗浄は製造装置の性能を維持する上でも重要な役割を果たしている．一方で，洗浄は多産の水とエネルギーを必要とする．昨今，地球環境保全の観点から限りある水資源を有効に使用することが世界的に求められており，洗浄に使用する水，薬品ならびにエネルギーの削減は喫緊の課題である．つまり，現在の食品製造の場において，洗浄技術は一層の清浄性実現と効率化を迫られている．これに的確に対処するためには，洗浄に関わる諸現象を科学的に理解し，合理的な指針に基づき，適切な洗浄条件を構築するほかにない．しかしながら，洗浄は我々にとって身近かつ重要な操作であるにも関わらず，製造工程の後始末という感覚が長年あったためであろうか，洗浄に関する科学的な検討は遅れている．