ERPの導入によってもたらされる企業価値－内部統制視点から見るSAP ERPがもたらす企業価値

摘要

全体最適、経営スピード／アジリティの向上、可視性の確保、従業員のエンパワーメントなどERP (Enterprise Resource Planning)がもたらす経営上の価値については古くから繰返し議論されてきた。 しかし、内部統制視点から見たERPの価値について議論されることは少なかった。 理由は三つに分類できる。 一つは、ERPを導入した日本企業の多くで導入時に、ビジネスプロセス·リエンジニアリングや意識改革あるいは企業固有要件の追加開発等に多大な労力がかかり、ERPが備える内部統制機能の有効活用には至らなかったこと。二つ目は、日本固有の大部屋主義と性善説に基づく管理思想が根底にあり、内部統制整備そのものに対する意識が低かったこと。 三つ目は、ERPシステムに高度な内部統制機能が備えられていること自体が知られていなかったことがあげられる。今、2009年3月期の日本版SOX法の施行開始を控え、ERPに組み込まれている内部統制の仕組や機能に対する関心が高まってきている。 このような状況を踏まえ、ここでは内部統制視点からSAP ERPの導入がもたらす企業価値を考えてみたい。