拡張前後縁部を有する翼型チューブ熱交換器の伝熱性能に与えるスリット幅の影響

摘要

近年の省エネルギー技術の進展やエネルギーの有効利用という面における熱交換器の果たす役割は大きい．そのため，過去に多くの研究者により，チューブやフィン形状を変更したり，フィン上に渦発生体を設置したりするなどの試みが行われてきた[1]．熱交換器の高性能化について考える際には，圧力損失の低減を図りつつ，熱伝達を向上させるというトレードオフ問題を解決する必要がある．本研究グループでは，フィンを付設せずチューブのみで熱交換を行うフィンレス熱交換器を提案し，実験と数値解析により伝熱性能の評価を行ってきた．特に，チューブを翼型にして，その翼型チューブの前後縁部を拡張することで，熱交換器の体積を一定としたまま伝熱面積を拡大した形状に変更することにより，同一体積におけるファン動力当たりの伝熱量を増大させることができた[2]．さらに，拡張前後縁部を有する翼型チューブに，伝熱促進を図るべくスリット加工を施した形状について検討を行った結果，熱交換性能の向上を図ることができた[3]．一方で，実機への適用を考えた場合，提案された熱交換器はスリットの3次元性を考慮する必要がある．そこで本研究では，3次元数値解析を行って熱交換器の性能に及ぼすスリットの影響を固体内の熱伝導を含め総合的に検討することを目的としている．