凍結速度と冷凍保管温度が魚肉氷結晶の成長に及ぼす影響

摘要

冷凍された食品の品質に影響する因子として，様々な説が提案されているが，中でも氷結晶のでき方，とりわけサイズが最も重要な因子として考えられている．すなわち，凍結速度の遅速は氷結晶形成の大きさに影響し，冷凍保管温度の高低は一旦形成された氷結晶の成長度合いに影響し，解凍速度については遅い場合には氷結晶サイズがさらに拡大されるとされ，このように形成された氷結晶サイズが総合的に影響し冷凍食品の品質が決定さされるとする考えである．しかし実際に魚肉の凍結速度と氷結晶サイズの変化の関係や冷凍保管温度と氷結晶サイズの変化を詳細な比較検討を行った例は少なく，氷結晶サイズが品質や価格にどう影響しているかは十分に検証されていない．畜肉等においては，氷結晶サイズが異なっていても凍結直後に解凍した筋肉組織の復元状態はあまり変わらないとする報告や，凍結時に氷結晶サイズが異なっていても長期間冷凍保管すると冷凍保管温度の高低で解凍後の復元状態が異なるとする報告もある．正確な冷凍理論の構築のためには，凍結速度や冷凍保管温度による氷結晶サイズの形成と成長について定量的に明らかにする必要がある．そこで本研究では養殖クロマグロ肉を試料とし，凍結速度を変えて凍結したときの凍結直後と冷凍保管後の筋肉細胞組織の氷結晶サイズの変化を詳細に調べた．また凍結速度を変えた肉を解凍し刺身としての品質を官能評価により調べ，品質との関係についても考察した．