空調システム内微生物量の低減に向けた検討紫外線照射時間が微生物殺菌効果に与える影響と応用

摘要

建築物の室内空気環境は空調機（内部の熱交換用フィン）によって温湿度が制御され，フィルタによって塵埃が除去されている.夏季の冷房時，熱交換用フィンやドレンパンは高湿度となり，空気中に含まれる塵埃や微生物が付着しやすい状況になる.空調機内部には微生物の増殖に必要な水分（結露水）や塵埃由来の有機物があるため，空調機が停止すると微生物が増殖し易い環境となる.その結果，一定期間を経て空調機を運転した場合，微生物活動によるニオイ発生の可能性が高まる.実際にこれまでの調査から，ドレン水が滞留する空調機のドレンパンは微生物の温床になっていることが確認されている[1,2]. 一方，近年の国際貿易量の増加と流通網の発達に伴い，病原性ウイルスや細菌の流行が世界規模で同時多発的に発生するようになってきた.その対策として，厚生労働省は，人·家畜·環境衛生の関係者が連携して対策に取り組むべきとする“One Health”理念に基づく国際的な薬剤耐性（AMR)対策の重要性を提唱している[3].また，訪日外国人増加による国際交流の活発化，少子高齢化による疾病弱者の増加，地球温暖化や異常気象による災害増加など，日本国内における様々な種類の感染予防のため，空調環境·衛生環境は従来以上に適切な管理や整備が必要になっている.そのため，細菌やウイルスを効果的に低減する技術の重要性が増しており，対策も急務である.