音声提示は視覚障害者の高度文章理解速度を改善するか

摘要

本論は、視覚障害者が高度な内容を含む文章を読解するに際して、音声メディアによる提示が読解速度に与える影響を文字メディアとの比較で分析する。ここでいう、「高度な内容を含む文章（以下「高度な文章」と略記）」とは、高等教育課程あるいは一般就労で読解を要求される水準の文章全般を指す。視覚障害者は高速な音声の聞き取り能力に優れるということが広く言われる。浅川らは視覚障害者への音声提示について、「最適速度」と「最高速度」を短文の聞き取り·理解を課題とする被験者実験により測定している。その結果く多くの実験参加者の「最適速度」が比較対象とした音声合成エンジン（日本アイ·ビー·エム株式会社製ProTALKER）の最高提示速度（約878モーラ／分）を上回り、上級者の「最高速度」では、1.6倍程度の値（約1400～1500モーラ／分）が確認された。