文末詞による話者の心情への気づき－対人モダリティタグとその心理学的影響

摘要

儀礼としてのコミュニケーション論に基づき，ポライトネス理論の観点から代表的な終助詞の機能と意味素性を整理した上で，それらの言語学的社会学的説明では答えられない心理学的問題を提起した．それらの問題に関して，文末詞「の」を対象として，その使用がメッセージ文の受け手に与える対人的印象，送り手の相互行為意図，受け手の参加感，さらに文の記憶への影響を調べた心理学実験を紹介した．その結果に基づき，文末詞「の」が“要関与”モダリティの知覚を引き起こすこと，またメッセージ文の処理に関しては，命題の心的表象を生成すると同時にモダリティタグが生成され，それが注意資源の配分や感情に影響を与える心的過程を提案した．