人類の歴史からみた“食”と宗教のかかわり：第17回 人口増加／環境破壊による食料生産の低下…矛盾の現実－生命に内包される無限の宝の発掘が矛盾を解決

摘要

地球の人口は現在63億人であるが，数十年後には90億人を超えるといわれている．こういう状況をみると，環境破壊や異常気象により食料生産の基盤の整備は喫緊の課題である．この解決は帰納的方法（積み上げ方式）だけでは追いつかない．矛盾の打開策が必要である．いま，先進諸国における食生活をみるとグルメが蔓延している．地球の食の消費や保存に関しては，民衆レベルでの食の動向が大きく影響する．キリスト教は，人間が他の動物や自然環境を支配することを奨励した．その結果，西洋諸国における肉食や環境破壊が促進されたといわれる．キリスト教は17世紀に衰退したが，それに代わって西洋科学技術文明が起こってきた．この文明は，人類の物質的富への欲望を解放し，環境破壊，拝金主義を促進するベースとなっている．また先進諸国における過食，飽食による生活習慣病を蔓延させている大きな原因ともなっている．一方，仏教は主に菜食，小食を奨励している．すなわち人間以外の生き物との調和を求め，人と地球の両方に健康をもたらす教えともいえよう．地球の人口は増加するが，地球環境の破壊が進み食の生産能力は低下している．したがって，静的に調和を求めているだけでは十分ではない．革新的に人口増加と環境破壊による食料生産の低下という食料対策の矛盾を打開しなければならない．仏教では生命に無限の宝が内包されていることを説いている．生命に内包される宝の発掘こそが，この矛盾の解決策であり人類を食料危機から救うものであると考える．