塗料·接着剤と金属系素材の界面制御（第5回）--金属素材の表面（1）

摘要

樹脂との結合に関与する金属表面は，ナノメートル（10~（－9）m＝10?）オーダーの組成と構造が対象で，いわゆるナノテクノロジーの世界である。 この極表面層の化学組成分析を可能にしたのは，1970年代から実用化されてきたESCAやSIMSあるいはAES（オージェ電子分光）などの表面分析装置である。 これらの装置によって，前回まで述べてきたように，種々の系において界面の化学結合の存在が実証されてきた。 同時に，今回から述べる金属極表面についての新事象すなわち，酸化膜の最上層にオキシ水酸化物の薄膜が存在すること，さらに表面には内部の不純物元素や合金成分が拡散濃縮している複雑な組成であることなどが解明されてきた。 これらの新しい発見は，樹脂との密着（接着）機構や密着劣化の原因究明に役立ち，製品の改良や新技術の開発に大きな成果を挙げている。そこで今回からは，金属素材として純金属，鋼私ステンレス鋼私各種メッキ鋼板およびアルミニウム合金の順に，その表面組成と構造を明らかにする。