無用の用

摘要

先日、久し振りに大阪の地下鉄に乗った。 子供の頃を四国で過ごした私は、年に1皮大阪の祖父母の家に遊びに行くのが何よりの楽しみだった。 地下鉄構内に入ると、何かほっとするような、暖いものにふわっと包まれるような心地よさを感じたものだった。 その理由の一つが、地下鉄の匂いであることはわかっていた。なhとも表現のしようがない、安心できる匂いであった。四国の少年には、これが大都会の匂いだと思えたのかも知れない。もう一つの理由が、10年ぐらい前の土木学会誌でわかった。 駅プラットホームの堂々とした空間だ。 御堂筋線の淀屋橋駅か心斎橋駅に降りたことのある人はご存知と思うが、プラットホームの天井は上下線を跨ぐ大きなアーチ構造で、おそろしく高い。 この一見無駄な空間が優れたデザインを生hでいる、と看破したのは東京工業大学教授（当時）の中村良夫先生である。