多官能ビニルモノマーの架橋乳化重合－ミクロゲル様架橋高分子微粒子の合成

摘要

高分子はその形状によって，線状，分岐および架橋高分子の三つに大別され，本稿では最も構造の複雑な架橋高分子，それも厳密には分岐高分子と架橋高分子の境域にあるナノサイズのミクロゲル様架橋高分子微粒子の合成をターゲットとした多官能ビニルモノマーの架橋乳化重合を取り上げる。ただ，乳化重合が多相系での重合であるためその反応機構は複雑であり，加えて架橋乳化重合では架橋反応が複雑に同時進行することになり，両者のシナジー効果を考慮すると新規な材料創製の観点からは無限の可能性を秘めているとの期待感を抱かせるものの，その基盤をなす架橋乳化重合反応機構の解明となると至難のことである。 架橋を伴う乳化重合については多くの報告がなされているが，それらを精査して共通項を見出し，その本質を探り出す作業は浅学非才の筆者にとって，到底，手に負えるものではない。 そこで本稿では筆者らの最近の研究成果に焦点を合わせ，“最先端の機能性エマルション·高分子微粒子”の特集号ということでミクロゲル様架橋高分子微粒子の合成に的を絞った，まさに独断と偏見による最近の進展を述べ，責塞させていただくことにしたい。