過給機回転速度がタービン動翼の対数減衰率および励振率に与える影響

摘要

近年，ディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンに搭載される過給機は，エンジンの高出力化，地球温暖化の防止，大気汚染防止などに対応する観点から不可欠な技術となっている．また，ターボ過給機ユーザからの性能および信頼性向上への要求は年々厳しさを増しており，メーカではこれに対処するため，新機種開発を鋭意進めている．過給機は高速回転機械であり，強度設計上，特に重要となるのは高負荷がかかるタービン動翼の設計である．小型舶用過給機の場合，過給機最高回転数におけるコンプレッサ圧力比は，3.5～4.0程度にまで達するため，これを駆動するタービン動翼にかかる負荷は非常に大きく，動翼の信頼性向上が高速回転機械の設計上，非常に重要な課題となっている．また，エンジンの高出力化にともない，新規過給機に対する要求はこれまで以上に高圧力比·大空気流量化の傾向が強くなっている．従来と同等の大きさの過給機で比較した場合，過給機をこれまで以上に高速回転させる必要があり，動翼はより過大な遠心力等の外力を受け強度的にますます厳しくなってきている．こうした過酷な作動条件の中で，動翼がウェーク，偏流等の影響により長い時間共振させられると振動応力が過大な場合は破損する可能性がある．ここで，動翼の振動源として最も大きなものは，動翼に流入する燃焼ガスの流速変動である．タービンにはノズル付きとノズル無しの2種類があり，この流速変動の主な原因は，ノズル付きの場合はノズルによるものであると考えられ，ノズル無しの場合は燃焼ガスがガス流路を通過する際，流れの流路形状の影響によるものであると考えられる．本報では，ノズル無しのタービンについて流速変動成分が翼振動に及ぼす影響を調べるため，小型舶用過給機を試験機として用い，ガス流路の流れに偏流を与えた場合と与えない場合に対し翼振動試験を行ない，振動応力および対数減衰率の計測から偏流が翼振動に及ぼす影響を調べるとともに過給機回転数がタービン動翼の対数減衰率および励振率に与える影響を明らかにした．