Weis-Fogh メカニズムを応用した船の推進機構－回転振動式機構による模型船の走行特性

摘要

Weis-Fogh メカニズムは，翼が渦を放出することなく循環と揚力とを発生する非常に効率のよい揚力発生機構として知られている.これまで著者の一人はこのメカニズムを応用した二次元の船舶用推進モデルを考案し，その理論的かつ試験的な研究に取組hできた.理論的な研究では，ポテンシャル理論と写像関数を用いて翼運動の最も効率的な運転条件を解析し,翼が開く際には大きな加速度を与えることで渦の放出が抑えられ大きな循環を生じること，閉じる際には減速して翼を閉じることで損失の原因となるジェットの発生が抑えられることなど，その力学的な特性を明らかにした.一方，実験的な研究では，模型船の走行試験により本機構が推進装置として十分に機能すること，翼の運動を適切にコントロールすることで推進効率がさらに改善されることなどを明らかにした.模型船の走行実験では，これまで70%以上の最高効率を達成した際の船の進行速度Uとこの方向に垂直な方向の翼の移動速度Vとの比V/U(以下，これを速度比と呼ぶ）が約0.5と小きいことを明らかにした.翼移動速度の増加が推力増加に直結する本機構は、最適な船体形状とすることで高速航行時に高い効率を実現することが可能である.一方，翼運動の最適化については，水路壁やばねによる翼の開き角自動調整の効果に関連して，理輪的な研究においても明らかにしたように翼の運動を適切にコントロールすることで，翼からの渦放出が一切ないほぼ理想流体に近い流れ場を実現し，一層の効率改善が図られる可能性があることを明らかにした.すなわち，本推進機構は，低速のみならず高速航行時にも優れた特性を持つ可能性を秘めたメカニズムである.