メタボリックシンドロームと Toll-like Receptors

摘要

メタボリックシンドロームの分子基盤として全身の軽度の炎症反応が指摘されている.肥満の脂肪組織ではマクロファージが浸潤しており，肥満の脂肪組織における炎症性変化がメタボリックシンドロームの病態に大きく関与する可能性が指摘されている.Toll-like receptors (TLRs)は自然免疫において重要な役割を果たす受容体フアミリーであり，TLR が病原体成分を認識することにより-炎症性サイト力ィンの遺伝子発現を誘導して獲得免疫が活性化される.近年，TLRファミリーのうちTLR4は感染防御のみならず，遊離脂肪酸，特に飽和脂肪酸の内在性リガンドとして，肥満や動脈硬化において認められる炎症性変化に簡与することが示唆されている. 本稿では，脂肪組織の炎症性変化を中心にメタボリックシンドロームにおけるTLR 4の病態生理的意義を概説し，最近我々が同定したマクロファージにおける飽和脂肪酸/TLR 4/NF kappa B経路の負の制御因子activating transcription factor 3 (Alr 3)について紹介する.