睡眠時無呼吸症候群

摘要

睡眠中に発生する呼吸障害の総称である睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing ； SDB)のなかで，最も主 要な病態が睡眠時無呼吸（sleep apnea)である。睡眠 時無呼吸は，1時間あたりの無呼吸（10秒以上の呼吸停 止）または低呼吸（呼吸の気流が10秒以上低下するこ とで低酸素または微小覚醒を伴う状態）の回数（apnea hypopnea index ； AHI)が5回以上と定義される。睡眠 中の呼吸停止または低下の結果として日中の過度な眠気 などの臨床症状を伴うものを睡眠時無呼吸症候群（sleep apnea syndrome ； SAS)とよぶ。睡眠時無呼吸は，呼 吸中枢からの呼吸ドライブそのものの減弱/消失による 中枢性睡眠時無呼吸（central sleep apnea ； CSA)と上 気道の閉塞による閉塞性睡眠時無呼吸（obstructive sleep apnea ； OSA)に分類される。心不全との関連から 考えると，CSAは心不全の結果引き起こされる病態であるのに対しOSAは心不全を発症/増悪するリスクとな る。臨床で遭遇する睡眠時無呼吸はOSAのほうが圧倒 的に多く，心不全管理として介入可能な要素もOSAの ほうが大きいことから，本稿ではOSAを中心に取り上 げる。OSAの有病率は2013年の報告では男性10～17%,女 性3?9%と報告されており，それ以前の報告における 有病率よりも増加している。これはOSAの最大のリス クである肥満を有する患者が増加していることによるも のと思われる。また，後述するように自覺症状に乏しい 症例も多く，この有病率ですら氷山の一角であり，診断 されていないOSA患者が一般人口のなかに非常に多く 存在するものと思われる。