東北管内の農業農村整備の20年間と今後の展望

摘要

東北管内は，全国の経営耕地面積の約20%,農業産 出額の約15%を占める日本の食料供給基地である。 水田は耕地面積の約7割を占め，「米どころ」としても 有名である。米以外にも，果実，野菜および畜産の産 地が多く ，農業産出額（平成29年度で1兆4,001億 円）の部門別割合は，米，園芸，畜産が3分の1ずつ を担っており，農業は東北の基幹産業となっている。 先人は，食料生産力の拡大を求め，血の滲むような努 力を重ね，江戸期には新田開発を伴って設置した鹿妻 穴堰（岩手)，明治期には大規模な水路開削や流域変更 を計った安積疏水（福島）や田沢疏水（秋田)，昭和期 には総合農地開発を伴う北上特定地域総合開発計画な どの開拓を進めてきた。そして，伝統ある施設は農業 農村整備事業によってICTによる遠方操作など，最 新の水利システムに更新されてきた。日本が人口減少 社会に転じ，半数以上の基礎自治体が消滅する可能性 があると言われる今，地方農村部への定住促進に向 け，地域の仕事を守り，6次産業化などの新たな仕事 を創造し，地域の価値を高める農業農村整備事業に対 する期待は大きい。限られた土地の効果的利用，適切 な資本投下と維持，知識を持つた労働力や技術者を確保していくこと力；'必要であるとともに，人口減少社会 でも地域を支えることができるICTやAI技術を導 入した農業農村整備事業を展開していく必要がある。