機械装置実働中の接触面の状態及び熱流れを知るための薄膜センサの開発とその応用

摘要

物理蒸着法を用いた厚さ数μmの薄膜センサ技術は，2円筒転がり接触面の接触圧力計測に用いられ，主として1GPaオーダーの圧力計測用として開発された．同時に線接触部の瞬時温度計測のための薄膜型温度センサも導入され，解析モデルの検証が行われた．内燃機関のピストンやすべり軸受のように通常は主に流体潤滑でしゅう動し，高負荷時に混合·境界潤滑になるエンジントライボロジーを対象とした1～100MPaオーダーへの薄膜センサの応用は部品の変形も伴うため困難とされていたが，筆者らが開発したエンジン用薄膜センサ技術によって多くの部品への展開が可能となった．一方，機械装置の熱流れは装置によって要求は異なり，内熱機関では燃焼室での熱損失は正味仕事の損失になるため，この低減効果を測るために同軸型薄膜熱電対による熱流束計測が行われてきた．エンジンの各しゆう動部においてはハイブリッド化に伴いオイルの早期昇温技術が必要で，トランスミッションではトラクション係数を決める油膜温度が必要となる．ここでは，物理蒸着法の1つであるスパッタリング法を用いて機械部品の表面に薄膜のセンサを直接形成し，瞬時の圧力，温度及び二面間の微小すきまやしゅう動面の変形を計測する技術について紹介し，加えて燃焼室壁面の薄膜熱電対について述べる．