環境計量と技術倫理

摘要

最近の東電原子炉の傷隠蔽事件に始まる各電力会社の同様な事件や雪印食品の食中毒事故，JCOのマニュアル違反が引き起こした事故，それと前後してイギリスから輸送されたMOX燃料棒の検査記録捏造の発覚などわれわれの身近で一見予想もつかない問題が生じている。 しかし，その現場の技術者たちにとってはそこまでに至るそれなりの理由があったに違いないことをわれわれは感じ取ることが出来る。 例えば，煩雑な，しかも運転のためにかなり無駄と思える非能率なマニュアル操作は工夫に富む技術者にとっては，安全はともかく，我慢がならないものであったろう。 一方，同じサイズで成形した燃料ペレットの測定は同じことの繰り返しであり，その差はほとhどなく，また，その納入に当っても先方がすべてを一つ一つチェックするゆとりもなし，そう言えば，わが国にもこれと似た原子力潜水艦入港時の海水放射能検査においてもまったく同じγ線スペクトル偽造事件があったことが思い出せる。また，運転上特別の配慮が必要でない安全性を見越した上限値を超える測定値を正確に発表すれば，そのために，装置の停止と解体，さらに，該当個所の部品のメーカーヘの輸送と修理，納入されてきた後の組み立てとテスト，定常運転までの手間とコストは莫大なものとなる。 ここにあげた事例には，直接計量にかかわるものが多いことに注意が必要であろう。 この点で計量技術は現代産業社会の中では極めて大きな社会的責務を負っていることがわかるであろう。