有機ELディスプレイの開発動向

摘要

1987年のイーストマンコダック社からの論文に端を発した現在の有機EL(electroluminescence)の研究は，今年で16年目になろうとしている．この間，基礎研究およびディスプレイ開発の両面で日本が果たした役割は非常に大きい．1997年に日本国内で実現した世界初の有機EL ディスプレイ実用化は国内メーカーの偉業である．この実用化を機にこの分野への関心は益々高まりをみせ，出願特許数の増加や関連する報道発表の増加がそれを反映している．ディスプレイ分野で相手にもされなかった有機EL が，ようやく次世代の有力なフラットパネルディスプレイとして認知されるようになってきた．ここでの有機EL ディスプレイとは，ガラス基板上に3原色である赤緑青(RGB)の有機EL素子（画素）がマトリックス状に形成されたフラットパネルディスプレイである．最も単純な単色の場合のパネル構造を図1に示す．金属陰極と透明陽極の交点が有機EL素子（画素）に対応する．有機ELディスプレイの特長は，非常に薄くできることは勿論のこと，自発光型であり視野角依存性がないため視認性に優れていることや表示速度が速いため動画表示に適していることが挙げられる．また，他のディスプレイに比べて構造が簡単であり，コスト面での優位性も指摘されている．将来的には，ブラウン管と同等の高画質を持つ超薄型·軽量のフラットテレビの実現が期待されている．