安全社会の構築に向けてヒューマンファクターズの視点より

摘要

本誌の2003年Vol.4No.3（シリーズ「ヒューマンエラー防止学」）で、「法人的放置型エラー」なるものがときどき大きな災害を生hでいる旨を指摘し、警鐘を鳴らした。 しかし、音が小さかったか、聞く人（シリーズの読者）が少なかったか、今一つ効果を感じられないでいる。この法人的放置型エラーとは、例えば「堆積物を長年放置し、それが経年変化で爆発物に化けて事故に至った」「作業効率を上げるために裏手順が行われていることを放置して、核燃料をつくっていた」「作業上の規則違反を放置して、建造中の客船で大火災を起こした」「点検漏れの指摘を受けながら配管の減肉を長期にわたって放置していた」といったたぐい事故·災害の背後で推進役をするエラーである。 それらがエラーではないと思われるかもしれないが、誤判断、判断あるいはその結果の停滞という意味で、立派にヒューマンエラーの仲間である。 ただし、この種のエラーには他の一般のヒューマンエラーとはかなり異質なものがあり、かつ波及する問題もいろいろあるので、ここで改めてさらに考究してみたい。 話の都合上、前記の記事といくつか重複する部分が生じるが、それはやむを得ないこととご容赦願いたい。