耳式体温計の校正·試験のための計量標準

摘要

耳式体温計は、数秒程度の短時間に簡便に測定が可能な新たな体温計として、90年代後半以降、我が国の国内市場にも本格的に導入され、医療機関はもとより一般家庭においても乳幼児の検温などへの利用を中心に急速に普及が拡大している。 人間の体温は、心拍や血圧などと共に、重要な生体指標の一つであり、その測定器である体温計についても、正確さと高い信頼性が強く求められる。 前回の報告において紹介したように、耳式体温計についても、適合性評価基準となる技術基準の標準（JIS規格）化の取り組みが行われ、0.2°C程度の最大許容誤差の範囲での校正·試験の実施が規定されている。 一方、製造事業者やユーザー等においてJIS規格に基づいた校正·試験を実施するためには、体温計の温度目盛の基準となる標準設備及び国家標準器との間のトレーサビリティの確保が不可欠となる。 本稿では、産業技術総合研究所（産総研）を中心とした、標準技術の開発と供給の取り組みについて紹介する。