新潟県の砂浜海岸汀線域における底質硬度と 飽和状態との関係

摘要

日本海沿岸において，砂浜海岸はもつとも普通に見ら れる海岸の一形態である。現在，各地の砂浜海岸では侵 食が深刻化していることもあり，その対策として種々の 保全あるいは回復措置が広く執り行われてきた。ところ が，現状ではそれらの対策は土木的、工学的見地に基づ いて砂浜海岸の土砂の動態を制御あるいは土砂の量を維 持-回復させようとするものであり，砂浜海岸が多くの 生物の生息するフィールドであることを踏まえた対策で はない。実際に日本海沿岸の砂浜海岸においては，汀線 域に膨大な個体数の底生生物が分布していることが知られているが，これらの生物の分布と底質の粒度や海岸勾 配などの要素とは明瞭な相関が見られず"，好適生息環 境とその要因が不明であって研究上ひいては砂浜生態系 の保全、管理の隘路となっていた。近年になり，砂浜" 岸汀線域を中心に生息する潜砂性の小型甲殻類について，地盤が毛管現象によって水を吸い上げる力であるサクシ ョンの動態やそれに伴う底質硬度の変動が分布の制限要 因として働いていることが明らかとなった2)3)。サクシ ヨンは，セラミック製のセンサーを砂中に挿入し水分張力を測定することで得られ（Photo1),干出時の地下水 位上に発達し，冠水時に消失するという特性を持つ。今 後，これらの知見、成果を砂浜海岸汀線域における生態