生物学的水処理法に磁気分離を活用した磁化活性汚泥法の特徴と実用化

摘要

活性汚泥法は最も広く利用されている微生物による汚水の浄化法である。微生物の沈降性が悪化することによる固液分離トラブルは大きな課題であり、根本的な解決策は見いだされていない。筆者は、密度が水とほぼ同じ活性汚泥を沈降分離することが原理的な問題と考えた。ろ過も活性汚泥は目詰まりしやすいため根本的な解決策とならないと考えた。別の新たな分離法として活性汚泥にマグネタイト（強磁性粉）を添加して、磁気分離を適用することを提案し、原理実験を1990年頃から開始した。活性汚泥は多様な微生物からなるフロックと呼ばれる凝集体を形成する。マグネタイトを混合するとフロックに速やかに吸着し、磁気分離できるようになった。マグタネイトを微生物濃度と同裎度加えると水中から活性汚泥を磁石で持ち上げること も可能であった。しかしながら、活性汚泥法では、微生物が汚水中の有機物を栄養源として増殖する。汚泥濃度を一定に保つため、この増殖分を余剰汚泥として引抜く操作が避けられない。従って、マグネタイトも引き抜かれた分を補充する必要があり、このコストが課題となった。余剰汚泥からのマグネタイト回収を試みたが簡単で経済的な方法が見つけられなかった。そこで、余剰汚泥の引抜きを行なわないで水処理を行なったところ、標準的な活性汚泥法の数倍の汚泥濃度で微生物の増殖と死滅がバランスし水処理を継続できた。マグネタイトの補充が原則として不要となった。余剰汚泥の処理の軽減は、活性汚泥法の大きな課題であったため、余剰汚泥の引抜きが不要な新しい活性汚泥法として磁化活性汚泥法が確立された。本論文では、生物学的水処理法への磁気分離活用の特徴をまとめると共に、新技術の社会実装に向けた最新の状況を報告する。