長期にわたる内科的治療実施後に開腹手術適応に至つた ホルスタイン子牛の臍静脈膿瘍の1症例

摘要

感染性臍疾患は，難産や不適切な助産による臍 の断裂異常，出生時の臍帯消毒、乾燥処置の失 宜，初乳給与、摂取不足による免疫不全，劣悪な 飼養環境からの汚染といつた要因が複合して，遺 残した臍構造物への細菌感染が起き膿瘍を形成することにより発生する[1,2].その発生件数は近 年増加しており，また感染が血行性に波及した場 合に関節炎，肝膿瘍および肺炎といった合併症を 引き起こすことから，発育不良もしくは予後不良 に至るなど農場経営上の大きな問題となっている [1].膿瘍を形成する部位によって，体表部に限 局する臍帯炎，臍から内腸骨動脈へ伸長する臍動 脈炎，臍から膀胱に至る尿膜管炎および臍から肝 臓へ伸長する臍静脈炎に分類される.いずれの場 合においても，抗生剤投与による内科的治療や， 膿瘍を切開して排膿後，内部の洗浄または増生し た肉芽の切除といった外科的治療が行われる.臍 静脈炎においては構造上の理由から感染が肝臓へ 波及しやすく，肝膿瘍併発例では外科的処置（造 袋術）が行われる場合もあるが，予後不良である ことが多い.