<伴侶動物における最新事情〉 もしも犬猫の外科医がャギの整形手術を実施したら？ ？ ？-CT画像から外科手術へ-

摘要

まず最初に先生方にお伝えしておく必要がある.演者 は附属動物病院で犬猫の腎泌尿器外科および整形外科の 外科診療を担当している.当然産業動物の診療には無縁 な状況であり，獣医師免許を取得して以降，牛にディー プに接触したことはないのである.そのような獣医師が とある縁（？）で今回学内飼育されている仔ャギの膝蓋 骨上方脱臼症例の整形外科手術を実施することになつて しまった.目的は担当学生達への教育であった.最初に 取りかかったのがャギの解剖を復習，,,いや新たに勉強 することからだった.犬にも膝蓋骨上方変位というもの が存在する力5,ャギの場合は未知の世界である.ところ がャギの膝関節の局所解剖が詳しく載っている参考書が なく.牛や馬から想像するしかないところもあった.次に触診やX線画像撮影により後肢の状況を確認した.膝関節は伸展したままで屈曲することは不可能であった. 本ケースではャギではあまりお目にかからないであろうCT撮影を実施することで後肢骨格の詳細を確認することにした.ヒトと異なり撮影するには麻酔をかける必要 があり，今回はキシラジン.ミダゾラム，プロボフォー ルで麻酔導入し，セボフルレンで維持した.当然留置針 の設置や麻酔導入にも苦労したことはいうまでもない. 両後肢の四頭筋群が硬縮し膝蓋骨が頭側に牽弓Iされてい る状態であったため.プレート、 ロッド法を用いた大腿骨矯正骨切短縮術を実施した.約5時間の時間を要し手 術を終了することができた、、、、しかし術後膝関節の可 動性は増したのだが，どうも後肢の突張り感が治まらな い.どうやら大腿骨頸体角が大きいことが影響していた ようであつたが，手術侵襲等を考慮しひとまず経過観察とした.本ケースは術後回復傾向にあつたが，最終的に 栄養摂取不足で死亡した.本講演ではCT画像をふまえ て伴侶動物外科医なりに本手術の問題点について考察し ていきたい.産業動物獣医師の先生方からも様々なご意 見等いただければ幸いである.