運動をするとカゼをひきやすくなるのか？ オープンウィンドウ仮説への挑戦

摘要

「趣旨」これまで漠然と語られてきた「免疫力」ということばには実態がない.測定可能な指標による現象の記載は研究の第一歩であるが，メカニズムの理解なしに正しい解釈は得られない.免疫学は免疫不全症における「免疫力」を定義することはできるが，健康人の「免疫力」を定義することはできていない.本ワークショップでは日本運動免疫学研究会のメンバーが健康人の「免疫力」評価に向けてのこれまでの成果と展望を紹介する.今回特に取り上げたのはPedersenらが運動後に免疫応答が低下するというオープンウィンドウ仮説である.この仮説は提案されてすでに15年になつたが，なぜ長時間あるいは高強度の運動を行うと一過性に免疫応答が低下するのかは詳しくは明らかになっていない.Fight or flee (戦うか逃げるか）という切羽詰まったときにケガをすることがあるが, 炎症が起こると動きに支障を来す.そこで例えばストレス応答で産生されるカテコールアミンを利用して安全確保できるまで炎症を抑制するものと考えられている.