医療機器埋め込み患者のMR安全性評価に必要な電磁気学の基礎

摘要

条件付きMR対応ペースメーカが2012年に 医薬品医療機器等法で承認されてから4年余 りの時が過ぎた.この間，心臓デバイスはも とより，脳深部刺激装置，脊髄刺激装置，人工 内耳などの能動的医療機器ゃステントをはじめ とした多くの受動的医療機器と，それらの埋め 込み患者のMR安全性がかってない頻度と活 発さで議論されてきた.このようなMR安全 性の評価は，機器とMRの電磁的相互作用が 複雑な上，目視できるものが限られていること から，一般に極めて難しい.このことはISO (International Organization for Mandardiza-tion ) , IEC (International Electrotechnical Commission)，ならびにASTM (American Society for Testing and Materials)の規 格?仕様における記述内容の膨大さからも窺い 知ることができる.またこのような相互作用の 理解には物理学，特に電磁気学の知識が不可欠 であるが，この電磁気学が難しい専門科目であ ると言われている.機器との相互作用を考え なくとも，MRは電磁気学の知識の集大成に見 えるほど様々な電磁現象を用いている.しかし ながら，MRの利用者は必ずしも電磁気学を 知っているわけではないため，上述のような規 格?仕様内容の理解に苦労することになる.そこで本稿では，医療機器埋め込み患者のMR安全性を考える上で必要と思われる電磁気 学の基礎事項の整理を試みる.精緻で深遠な電 磁気学について，限られた知識と紙面で語りつ くすことなどは到底できないが，MR安全性を 物理学的観点から考えるにあたつて最低限必要 と思われる電磁気学の要点をまとめ，MRで用 いる電磁界と埋め込み機器との相互作用の原理 を解説する.本格的かつ実用的な（工学的な） 電磁気学を学ぶために良いと筆者が思う教科書 は参考文献として挙げさせて頂くので， 適宜ご参照されたい.