草地土壌の温室効果ガス、シンク、ソ一ス機能に関する研究

摘要

草地は畑地より炭素貯留機能が大きいが，草地管理は温暖化係数の高いメタン（CH_4)や亜酸化窒素（N_2O)の排 出量を変化させる。本研究は，草種構成，草地更新，堆肥散布がCH_4とN_2Oの排出量に及ぼす影響を明らかにする ため，那須の火山灰土壌の草地において実証試験を行った。第3章でほ，や草地の草種構成がCH4とN20の排出量に 及ぼす影響を述べた。オーチャードグラス（OG)単播草地，シログローバ（WC)単播草地，OG/WC混播草地の CH_4とN_2Oの排出量は，それぞれ—1.8， ― 2.4，-1.8 kg C ha~(-1)y~(-1) 0.39, 1.59， 0.67 kg N ha~(-1)y~(-1)であった。WC は土壌通気性を高めたがCH4年間吸収量を有意に増加させなかった。WC裁培されるとN20年間排出量が有意 に増加した。第4章では，草地更新時のN_2O排出量を述べた。草地更新を行雜きた草地(更新草地）と行わない草地 (対照草地）のN_2O排出量は，それぞれ2.1-5.3， 0.96-2.8 kg N ha—1で草地更新はN_2O排出量を有意に増加させ た。更新草地では，すき込まれた根と刈株から窒素無機化が起こり，土壌水分はN20が生成され易く，また排出さ れ易い領域に分布した。更新時期の土壌水分や更新直後の降雨量が多いfe:N20排出量が増加した。第5章では，堆 肥散布が草地からのN20とCH4の排出量に及ぼす影響を述べた。堆肥と化学肥料を散布した草地（堆肥区)と化 学肥料のみを散布した草地（化学肥料区）のN20とCH4の排出量を比較した。なお，雨処理区の窒素供給量は210 kg N ha—、一1に調整した。堆肥区と化学肥料区のN20年間排出量は，それぞれ7.0-1.0, 4.7-9.1kg N ha~(-1)y~(-1)で 堆肥散布がN20年間排出量を増加させた。堆肥区と化学肥料区のCH_4年間排出量は，それぞれ-0.74-0.16， -0.84-0.52kg Cha~(-1)y~(-1)で堆肥散布はCH_4年間排出量を増加させなかった。以き結果から，N_2O排出量を抑 制するため，WCの窒素固定や堆肥の無機化を考慮して施肥量を削減し，地温や土壌水分の高い時期を避けて更新を 行うことが重要と指摘される。