EMTによる癌転移'浸潤と薬剤耐性の相互誘導性

摘要

卵巣癌の特徴は腹膜播種を起こしやすく，婦人科悪性腫瘍の中でも最も予後不良な癌腫の1つである．卵巣癌の腹膜播種は，（1）原発巣から腹腔内への腫瘍細胞の離脱，（2）腹膜中皮細胞との接着，（3）腫瘍細胞の遊走浸潤，局所増殖，および，（4）腫瘍の血管新生などの多段階のステップから成立する．腫瘍細胞と中皮細胞との相互作用にも着目し，各過程において上皮－間葉転換（EMT）の果たす役割についてこれまでの知見を紹介したい．また，EMTは転移浸潤のみならず，同時に薬剤や放射線などによるセルストレスに対する抵抗性を誘導する可能性がある．今回，特にEMT誘導転写因子，TWISTに注目して卵巣癌の腹膜播種と薬剤耐性の相互誘導性を中心に概説する．