精子由来の父性ミトコンドリアは受精依存的に誘導されるオートファジーによって選択的に分解される

摘要

ミトコンドリアは真核生物にとって生体エネルギーを産生する重要な細胞内小器官である．通常，ミトコンドリアは酸化的リン酸化によりATPを産生しているが，その機能が低下すると心臓．骨格筋．脳などに異常を生じるミトコンドリア病や糖尿病などの原因となることも知られている~1), 2)．このミトコンドリアは細胞内小器官でありながら独自のゲノムを持っている．核ゲノムは父方．母方の両者から遺伝するのに対し．ミトコンドリア（Mt）ゲノムは多くの場合，母方のみから子孫に受け継がれていくことが知られている3)．この遺伝形式は母性遺伝として知られており，緑藻や細胞性粘菌から魚類，植物そして哺乳類など多くの種で観察されている． 一部の種ではそもそも受精時に父性ミトコンドリアが受精卵に入らないことが示唆されているが． ヒトをはじめとした多くの生物では父性ミトコンドリアが受精卵に侵入することが確認されている3)．しかし，その後なぜ母性Mtゲノムのみが受精卵に残り子孫へと伝達されていくのか，その詳しいメカニズムはミッシングリンクとして残されていた．