日本と東南アジアにおけるジュゴンの現状

摘要

ジュゴンは，東アフリ力からオセアニアにかけてのインド洋?太平洋の熱帯．亜熱帯沿岸海域にかけて広く生息する草食性の海棲哺乳類である(図1)。分布域に含まれる国は45力国を超え，その海岸線の総距離は140，000kmにも及ぶ。全体の生息数は依然として不明であるが，最大の個体数を有するオ一ストラリアでは約85，000頭，次いで多いアラビア湾では約7，000頭が生息すると過去に推定されている。ジュゴンの分布域に含まれる諸国の多くが発展途上国であるためか，分布域の少なくとも3割では個体数の顕著な減少あるいは絶滅が危惧されており，半分近くではその情報が不足している。遺伝的に日本の個体群に近い系統を有するとされる東南アジアに焦点を当てると，多くの地域で個体数は急激に減少しており，ジュゴンの生息に関する情報不足もょり顕著である。こうしたなか，台湾おょびモ一リシャスではすでに地域絶滅が報告されており，ジュゴンをとり巻く現状は厳しい。世界のジュゴンに関する分布や生態にっいての詳細な報告はすでにいくっもなされており，本稿では，日本おょび東南アジア海域における近況にっいて紹介する。