有害有毒赤潮の生物学(24)

摘要

魚介類を斃死させる赤潮渦鞭毛藻ヘテロヵプサ（Heterocapsa circularisquama），コクロディニウム（Cochlodinium polykrikoides），カレニア（Karenia mikimotoi），および赤潮ラフィド藻のシャットネラ（Chattonella antiqua），ヘテロシグマ（Heterosigma akashiwo）は，細胞間の直接接触により渦鞭毛藻アカシオ（Akashiwo sanguinea）やGymnodinium instriatumなどのさまざまな植物プランクトンを殺滅することが知られている1～5）。表1に，細胞間の接触が他種あるいは同種の植物プランクトン細胞に与える影響についての情報をまとめた6～9）。他種の死亡や増殖阻害，運動停止，一時シスト（temporary cyst）の形成誘導等の効果を与えるだけでなく，同種間において細胞間の接触は，運動性接合子（planozygote）が不動接合子（hypnozygote）またはシスト（cyst）に変化していくうえで重要な役割をはたしているという6,10）。今回は，渦鞭毛藻の生活環のなかでこのシスト形成の部分について，細胞間接触の影響を紹介する。